第44回創作ラジオドラマ大賞 公開講座 レポート(2015/11/14)

 去る1114日(土)、渋谷道玄坂フォーラム・エイトにて、「第44回創作ラジオドラマ大賞 公開講座」が行われました。

NHKドラマ部 真銅健嗣さん
NHKドラマ部 真銅健嗣さん

  最初に、NHKドラマ部チーフディレクターの真銅健嗣さんの講演が行われました。制作者はコンクールに何を期待するのでしょうか。真銅さんは、「コンクールはゴールではなく登龍門。何年後かのプロのラジオドラマの脚本家と出会う場だと考えています」とお話しされました。そのうえで、「魅力ある人物を書く」「正しく意味が伝わる良い日本語で書く」「自分らしいオリジナリティあふれる作品を書く」という3つのポイントをアドバイスされました。そして、「ただの受け手ではなく、送り手である私たちの仲間になれるように頑張ってください」と受講者にエールを送ってくださいました。


脚本家 藤井香織さん
脚本家 藤井香織さん

  続いて行われたのは、創作ラジオドラマ大賞入賞をきっかけにラジオドラマの脚本家として活躍中の藤井香織さんの講演です。藤井さんは、自身の経験をもとに「ラジオドラマの脚本を書くなら、ラジオドラマをちゃんと聞いてほしい」と述べられました。当たり前のこととはいえ、意外に軽視されがちなポイントだと思いました。また、書き上げた作品を他人に読んでもらうことの大切さも指摘されました。そのほかに、コンクール受賞後にどんな経緯で仕事が来るようになったか、打ち合わせなどの現場の雰囲気についての紹介もありました


脚本家 山田文恵さん
脚本家 山田文恵さん

  その後は、前回の佳作受賞者の山田文恵さんが講演を行いました。山田さんは、すでに放送された受賞作「シュガー・ソネット」の内容や審査の経緯、制作スケジュールや作業内容などについてお話しされました。放送までの脚本の直しや、収録時の印象、放送後のリスナーの反応なども語ってくださいました。最も身近な前回受賞者のお話だけに、受講者は目を輝かせて聞いていました。


 

左から 北阪昌人さん、井出真理さん、山本むつみさん、藤井香織さん、真銅健嗣さん
左から 北阪昌人さん、井出真理さん、山本むつみさん、藤井香織さん、真銅健嗣さん

   この日の最後に行われたのは座談会です。真銅さん、藤井さん、そして脚本家の山本むつみさんと井出真理さんが北阪昌人さんの司会のもとで、幅広いテーマについて話をされました。ラジオドラマの勉強法について井出さんは、「舞台を観るのが好きだったので、それが役に立った」とご自身の経験を語られました。また、山本さんはラジオとテレビの脚本の違いについて、「映像がないラジオはセリフ力が求められる。複数の人物の描き分け方も重要」と指摘されました。「ラジオドラマ向きの素材はあるのか?」というテーマについては、出席者から「音がポイントになるものがよい」(井出さん)、「同じような人物が多数登場するものは向かない」(山本さん)、「人間をちゃんと書くことが大切。ラジオ向きかテレビ向きかはその後の問題」(北阪さん)といったお話がありました。そして受講生が最も気になる「入賞する作品と落選した作品の違いは?」というテーマについては、「登場人物が大切。ストーリーに乗せて人を動かそうとすると失敗する」(井出さん)、「作者が何を書きたかったかわかる作品を評価する」(山本さん)、「作者自身が投影されている作品がよいのではないか」(藤井さん)、「過去のコンクールでは、ひとつの世界が出来上がっている作品が評価された」(真銅さん)といったお話がありました。その後は質疑応答があり、受講生たちの質問に対して出席者の皆さんがていねいに回答されました。出席者からの応募に向けたメッセージもあり、あっという間に時間が過ぎました。ときおり笑いも生まれる和気あいあいとした雰囲気ながら、真剣な内容の座談会でした。


  日本放送作家協会のさらだたまこ理事長による力強い激励の言葉で、公開講座は終了しました。今回の講師の脚本家の皆さんは、いずれもラジオドラマのコンクール出身でラジオやテレビの第一線で活躍する方々。真銅さんも「FMシアター」をはじめ、たくさんのラジオドラマの演出を手がけています。それだけに、受講者にとってより身近で、具体的なお話が多かったように感じられました。細かなテクニックだけでなく、「書く」ことに対する心構えのようなものが学べて、モチベーションが高まったことも、大きな収穫だったのではないでしょうか。今回の経験をコンクールの応募はもちろん、様々な執筆の場で生かしたいと思います。 (セミナー受講生 )