第41回創作ラジオドラマ大賞公開講座レポート

演出・脚本家の吉村ゆうさん
演出・脚本家の吉村ゆうさん

   去る1116日(金)、渋谷東急プラザにて、「第41回創作ラジオドラマ大賞公開講座」が行われました。

 

   最初に、「ラジオのドラマの脚本~所変わればト書きも台詞も変わる」というテーマで、吉村ゆうさんが講義を行いました。テレビドラマとラジオドラマの最大の違いは、映像があるかないかです。映像がないラジオドラマは、音だけで人物設定や場面、状況などを伝えなければいけません。それだけに台詞やト書きにテレビドラマとは違う工夫が求められます。そうした点について、まず講義で解説した後に、今度は2名の俳優による実際の演技を見ながら、より実践的な指導が行われました。また、最後には、受講生がその場で書いたショートシナリオを俳優が演じて、伝えるべきことがきちんと伝わっているかを全員で考えました。

   実際に俳優が話す台詞を耳にして、紙に書かれた台本を読むだけではわからない細かなニュアンスまで、理解がより深まりました。吉村さんの「映像がないラジオドラマでは、誰がどんな状況にあるのかがわかるように、視点を明確にすることが大切」という言葉を聞いて、ラジオドラマの難しさと同時に醍醐味が少しは理解できた気がします。

 

左から井出真理さん、小宮山佳典さん、中澤香織さん、吉村ゆうさん
左から井出真理さん、小宮山佳典さん、中澤香織さん、吉村ゆうさん

   続いて、「思わず作品化したくなる脚本(ホン)!」というテーマで、パネルディスカッションが行われました。パネリストは、NHKドラマ部エグゼクティブ・ディレクターの小見山佳典さん、昨年度の佳作入選作品『異国の太鼓』の作者の中澤香織さん、そして再度登場の吉村ゆうさん。総合司会は井出真理さんです。

   ここでは、特に創作ラジオドラマ大賞と、その入賞作が制作・放送される「FMシアター」などのNHKのラジオドラマについて、様々な角度からのお話がありました。特に小宮山さんは実際の制作現場から、現在のラジオドラマの置かれた状況と新人の活躍の可能性についてお話しされました。また、その中で、今どんな脚本が求められているのかについての貴重なお話もありました。一方、中澤さんはご自身が受賞作を執筆した際の苦労話や、その後、それが制作・放送された際の感想、周囲の反響などについてお話されました。

司会の井出真理さん(脚本家)
司会の井出真理さん(脚本家)

   こうしたお話も含めて、テレビに比べて地味に思えるラジオの世界でも、努力次第で脚本家が活躍できる余地が十分にあることが実感できました。その登龍門として創作ラジオドラマ大賞が大きな役割を持っていることも理解できました。特にパネリスト全員に共通した意見として、書き手の「思い」が最も大切だという話がありました。コンクールというと、すぐに「どんなジャンルの、どんな傾向の作品が受賞しやすいのか」といったことを考えがちですが、そんなことよりも「これが書きたいんだ!」という熱い思いがなければ、制作者などの心を動かすことはできないことを強く感じました。

 

   2時間という短い時間ではありましたが、濃密な時間を過ごし、多くのことを学ぶことができました。ラジオドラマの脚本家として何が必要なのか、今後何を胸にとどめておくべきなのかがよくわかり、私自身、コンクール応募に限らず、今後の執筆の様々な場面に今回の講座を生かしながら、頑張っていこうと思いました。 (セミナー受講生 T)