第37回創作テレビドラマ大賞公開講座レポート
去る5月11日、東京国際フォーラムにて、「第37回創作テレビドラマ大賞公開講座」が行われました。
最初のテーマは「脚本家への道」ということで、横田理恵氏が講義を行いました。
脚本を書く上で最も大事にしている事は、フィクションを書く際に、登場人物の台詞や気持ちは本物として描写をする事だとお話されました。フィクションの世界だからこそ、中に生きる人物の心情や言葉は現実に生きる人以上に、リアルでなければならない。そうしないと見ている人の共感を得られず、本当の作り物になるからです。この言葉を聞いた時、私は思わずハッとしてしまいました。自分の作品に出てくる人達にリアリティはあったのだろうか?「この設定は面白い!」としか考えていなかったのではと思うと、とても恥ずかしくなってしまいます。
続いて、「制作現場〜新人作家に望む事」というテーマで、NHKのドラマプロデューサー鈴木圭さんがご登壇されました。
NHKのテレビドラマに23年間携わっているという鈴木さんからは、作家に最も必要な事は何かという事について講義をしてくださいました。
「台詞には脚本家の熱い思い・気迫を思いっきりこめなければならない」
書き手の熱い思い・気迫を伝えなければ脚本は良い脚本になり得ないというのです。台詞は脚本家の経験、すなわち人生を表すものであり、その台詞が熱いものにならなければ作品自体がだめになってしまうという。
ストーリーの展開や、人物の心情描写など、物語全ての舵を取る台詞をもっと大事にするべきだと痛感いたしました。
続いては「受賞作が放送されるまで」というテーマで本河純子さんが、お話しをしてくださいました。本河さんは、「第36回創作テレビドラマ大賞」で大賞を受賞されており、聴講生に近い立場でのお話をされました。
「創作テレビドラマ大賞は書き手の思いを汲み取ってくれる」
この作品をどれだけ楽しんで書いたか、どれだけ思いをこめたかという事を作品から読み取ってくれ、評価してくれるのだとお話していただきました。
ただ、だからといって勢いで書くだけではなく、一度冷静になって、客観的に自分の作品を見直さなければいけない。本当にこれでいいのか?と何度も書きながら改稿していく事も必要であるとおっしゃていました。
そして最後はシンポジウムが行われ、大森寿美男さんと再度ご登壇の鈴木圭さん、横田理恵さんがお話をしてくださいました。
ここでは「創作テレビドラマ大賞」に向けての話から作家としてのあり方まで話を膨らませて、貴重なお話をしていただきました。「創作テレビドラマ大賞」については、NHKだからNHKっぽい話を書くのではなく、本当に自分が書きたいものを書くのがよいというお話でした。傾向と対策では無いけれども、どこか似た作品が送られてくるらしいので、自分が情熱を持って書ける作品を自信を持って書くのが一番の審査に通る近道なのかもしれません。
全員が口を揃えて言っていたのは、台詞をないがしろにする作品は絶対に良い作品にはならないということでした。自分の作品に出てくる登場人物の台詞や行動は全て、作者自身の色々な経験が散りばめられた投影である。だからこそ大事にして書かなければならないと私は再度のこの講座で気づかされました。
私は、この2時間という濃密な時間で、脚本家としてのあり方や、今後胸にとどめておかなければならない大事な事を沢山学びました。私自身、作品作りに煮詰まった時、困った時は、この講座で聞いた言葉を思い返し、頑張っていこうと思いました。(セミナー受講生 M)